気候変動への取組

気候変動に対する当社(投資法人)の認識

2015年に採択されたパリ協定では、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて、2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする、という世界共通の長期目標が掲げられました。
2021年に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次報告書(第1作業部会)では、人間の活動が温暖化に影響を及ぼしていることには疑う余地がないこと、また、世界平均気温は少なくとも今世紀半ばまでは上昇を続け、今後数十年の間に温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中には1.5℃及び2℃を超えることなどが指摘されております。
本投資法人(JEI)では、サステナビリティ方針に基づき、企業の社会的責任として持続可能な社会の実現を目指していくために、2020年10月にマテリアリティ(重要課題)を策定し、その一つとして、「環境負荷の低減等による気候変動対策の推進」を設定しました。
気候変動への対応は重要な社会的課題の1つであり、脱炭素社会への貢献は社会的使命であること、また中長期的なJEIの持続可能な成長につながるとの認識のもと、国内外における気候変動対策が加速する中、2021年10月に CO2排出量削減中期目標「2030年度のCO2排出量原単位を▲46%削減(2013年度比)」を設定し、2023年1月に長期目標として「2050年度CO2排出量ネットゼロ」を設定しました。

TCFD提言への賛同表明(およびTCFDコンソーシアムへの参加)

気候変動は金融におけるシステミック・リスクであるという認識のもと、気候関連のリスク・機会に関する情報の開示が投資家など多くのステークホルダーから求められています。
2021年6月、JEIの資産運用会社であるジャパンエクセレントアセットマネジメント株式会社(JEAM)は、金融安定理事会(FSB)により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を行うとともに、国内の賛同企業等が参加するTCFDコンソーシアムに加入しました。
TCFD提言に沿って気候変動がもたらすリスク・機会について識別・評価・管理を行い、事業のレジリエンスを高めることは、JEIの持続可能かつ安定的な収益を長期的に確保するためにも必要不可欠な事項であり、気候関連リスクについての分析・開示、対応を推進してまいります。
TCFDコンソーシアムにおいては、TCFD提言へ賛同する企業や金融機関等が一体となって取組を推進し、企業の効果的な情報開示や開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組について議論されています。同コンソーシアムへの参加を通じて、賛同企業との対話や好事例等の情報収集を行い、TCFD提言に即した気候関連の情報開示を進めてまいります。

ガバナンス

JEAMでは、気候変動問題が自然環境と社会構造に劇的な変化をもたらし、JEAM及びJEIの経営とビジネス全体に重大な影響を与える課題であると認識し、気候変動に関するリスクと機会への対応、および気候関連課題への事業・戦略のレジリエンス(強靭性・回復力)等に係る取組に関する基本方針と社内体制等を規定する「気候変動対応規則」および「気候変動対応に係る実施要領」を2021年10月に定めました。
サステナビリティへの取組を組織的に推進するため、代表取締役社長、各本部長(取締役)をはじめとする主要メンバーで構成する「サステナビリティ会議」を設置しており、気候関連課題を含む取組については、議長である代表取締役社長が最高責任者として監督し、各課題を担当する部の部長が実務上の責任者として取組を推進します。
「サステナビリティ会議」において、気候関連リスク・機会の識別・評価、管理や、適応と緩和に係る取組の進捗状況、指標と目標の設定等に関する事項を、最高責任者に対して定期的に報告し、サステナビリティ会議の出席者が、各議題について審議・検討した上で、最高責任者が最終的に意思決定を行います。

<体制図>

体制図

戦略

JEAMは、2021年6月にTCFD提言への賛同を表明し、2021年12月にはじめてサステナビリティ会議の構成メンバーがJEIにおける気候関連のリスク・機会の定性的シナリオ分析を実施し、2022年1月開催のサステナビリティ会議にて最高責任者の承認を受けました。

1.シナリオ分析の対象範囲

JEAMが運用を受託するJEIの不動産運用を対象範囲とし、シナリオ分析を実施しました。

2.参照シナリオ

気候変動リスクは、移行リスクと物理的リスクに大別されます。一般的に、「移行リスク」とは社会経済が低炭素・脱炭素に移行することにより生じる事業上の不確実性を指し、「物理的リスク」とは気候変動の進行に伴う、従来の気候パターン、気象現象からの変化の結果生じる事業上の不確実性を指します。

今回のシナリオ分析にあたり、参照されたシナリオは以下のとおりです。

リスク 情報源 1.5~2℃シナリオ 4℃シナリオ
移行リスク IEA(国際エネルギー機関)World Energy Outlook 2020 IEA NZE2050 IEA STEPS
物理的リスク IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第5次報告書 IPCC RCP4.5 IPCC RCP8.5

3.世界観

各シナリオでは以下のような世界観を想定しています。

(1) 1.5~2℃の世界観

体制図

(2) 4℃の世界観

体制図

4.リスクと機会の財務的影響評価及び対応策

気候変動リスクと機会の定性的分析において、2021年度に以下のとおりリスクと機会の特定およびその財務的影響を評価し、それぞれのリスクと機会に対して今後の対応策を検討しました。2022年度においては、上記にて特定・評価したリスクと機会のうち特に重要かつ文献等によって試算が可能であった項目について、定量的な財務的影響分析を行いました。
今後は保有するビルの環境・省エネ対策やエネルギー利用効率化、再生可能エネルギー由来電力・CO2フリー電力の更なる導入によるCO2排出量の削減、ハザードマップ等の活用によるリスクアセスメントの実施等を進め、事業のレジリエンスの向上に努めてまいります。また、これらのシナリオ分析の結果をJEIの運用計画・財務計画へ反映させるべく検討を進めてまいります。

<特定した気候関連リスクと機会の定性的財務影響分析>

4℃シナリオ 1.5~2℃
シナリオ
財務的影響 財務的影響
不動産運用における関連 JEIへの財務的な影響 検討すべき対応策・リスク管理等 短期 中期 長期 短期 中期 長期
移行リスク 政策と法 炭素税の導入によるGHG排出に対する課税の強化 物件のGHG排出量に対する税負担の増加
  • ・再生可能エネルギー由来電力、CO2フリー電力への切替によるCO2排出量の削減
既存・新規建築物における省エネ基準の強化 対応のための改修費用の増加、物件取得価格の上昇
  • ・設備更新・改修等による既存保有物件のエネルギー効率向上
  • ・高い環境性能を有する物件への入替、新規取得
テクノロジー 再エネ・省エネ技術の進化・普及 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐための新技術導入費用の増加
  • ・最新の省エネ設備を有する物件への入替、新規取得
市場 不動産鑑定への環境パフォーマンス・災害レジリエンス等の基準の導入 ファンドのNAV(Net Asset Value)の低下
  • ・DBJグリーンビル認証取得比率の向上
  • ・設備更新・改修等によるエネルギー効率の向上、CO2排出量の削減
  • ・ハザードマップ等の活用によるリスクアセスメントの実施
  • ・必要に応じた増強対応による物件の被災リスク軽減
格付機関のESG評価、投資家・レンダーのESG投融資スタンスの変化 ESG・気候変動対応の遅れによるデット・エクイティ調達コストの上昇
  • ・ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実
  • ・外部機関によるESG評価の向上
テナントの需要変化(より気候変動への対応が進んだ物件を選択する、または対応していない物件を避ける) 新規テナント獲得が難しくなることによる収入の減少
  • ・DBJグリーンビル認証取得比率の向上
  • ・再生可能エネルギー由来電力、CO2フリー電力への切替によるCO2排出量の削減
  • ・設備更新・改修等による既存保有物件のエネルギー効率向上
  • ・必要に応じた増強対応による物件の被災リスク軽減
評判 気候変動対応の遅れによるブランド価値の低下 入居率の低下による収入の減少、投資口価格の低下
物理リスクと機会 急性 台風等の風害による物件被害の増加 修繕費・保険料の増加、稼働率の低下
  • ・ハザードマップ等の活用によるリスクアセスメントの実施
  • ・浸水被害の影響を受けにくいエリアの物件保有
  • ・必要に応じた増強対応による物件の被災リスク軽減
集中的豪雨による内水氾濫や近傍河川の氾濫等による浸水
慢性 海面上昇や降雨や気象パターンの変化による物件の浸水 大規模改修(嵩上げ)費用・浸水対応設備の増強費用の発生
猛暑日や極寒日など極端気候の増加による空調需要の増加 空調の運転・メンテナンス・修繕費用の増加
  • ・設備更新・改修等による既存保有物件のエネルギー効率向上
  • ・グリーンリース契約の拡大、テナントとの協働による省エネ対応の実施
  • ・施設内緑化の推進
機会 製品・及びサービス 洪水などの災害のリスクが軽減化された設備・サービスの提供 賃料引き上げ、テナント新規誘致・継続入居による収入増加
  • ・ハザードマップ等の活用によるリスクアセスメントの実施
  • ・必要に応じた増強対応による被災リスクの軽減
高効率・低排出な設備・サービスの提供によるテナント・利用者への訴求
  • ・DBJグリーンビル認証取得比率の向上
  • ・再生可能エネルギー由来電力、CO2フリー電力への切替によるCO2排出量の削減
  • ・設備更新・改修等によるエネルギー効率の向上、CO2排出量の削減
市場 テナント・入居者の嗜好の変化に合わせた賃貸物件の継続的な提供、新規顧客層の開拓
ESG投資の一層の進展によるレンダー・デッド・エクイティ投資家の投融資スタンスの変化への対応 ESG・気候変動対応を重視する投融資家への対応・訴求による調達手段の多様化・調達コストの低下
  • ・ESG・気候変動対応の推進、開示内容の充実
  • ・グリーンファイナンス、サステナビリティファイナンスの更なる活用による資金調達コストの削減
  • 時間軸については、短期:2025年迄、中期:2030年迄、長期:2050年迄を想定

<定量的財務影響分析>

リスクと機会による収益への影響(イメージ)

リスクと機会による収益への影響(イメージ)

各シナリオにおいて想定される影響
各シナリオにおける影響
区分 項目(リスクと機会) 4℃ 1.5~2℃
移行リスク 政策と法 炭素税の導入によるGHG排出に対する課税の強化 物件のGHG排出量に対する課税強化なし(現状維持) 物件のGHG排出量に対する税負担が大幅に増加(-)
既存・新規建築物における省エネ基準の強化
  • ・省エネ対応のための改修費用の増加(-)
  • ・省エネ改修による光熱費・CO2排出量の削減(+)
  • ・省エネ対応のための改修費用の増加(-)
  • ・省エネ改修による光熱費・CO2排出量・炭素税の削減(+)
テクノロジー 再エネ・省エネ技術の進化・普及 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐための新技術導入費用の増加(-) 保有物件の設備が技術的に時代遅れになるのを防ぐための新技術導入費用の増加(-)
市場 不動産鑑定への環境パフォーマンス・災害レジリエンス等の基準の導入 環境認証有無が不動産価格へ影響(+) (-) 環境認証有無が不動産価格へ影響(+) (-)
格付機関のESG評価、投資家・レンダーのESG投融資スタンスの変化 ESG・気候変動対応の遅れによるデット・エクイティ調達コストの上昇(-) ESG・気候変動対応の遅れによるデット・エクイティ調達コストの上昇(-)
テナントの需要変化(より気候変動への対応が進んだ物件を選択する、または対応していない物件を避ける) 環境認証未取得の物件にて賃料収入が減少(-) 環境認証未取得の物件にて賃料収入が減少(-)
評判 気候変動対応の遅れによるブランド価値の低下 入居率の低下による収入の減少、投資口価格の低下(-) 入居率の低下による収入の減少、投資口価格の低下(-)
物理的リスク 急性 台風等の風害による物件被害の増加 修繕費の発生、賃料収入の減少(-)
保険金にて大部分をカバー(+)
修繕費の発生、賃料収入の減少(-)
保険金にて大部分をカバー(+)
集中的豪雨による内水氾濫や近傍河川の氾濫等による浸水
慢性 海面上昇や降雨や気象パターンの変化による物件の浸水 大規模改修(嵩上げ)費用・浸水対応設備の増強費用の発生(-) 大規模改修(嵩上げ)費用・浸水対応設備の増強費用の発生(-)
猛暑日や極寒日など極端気候の増加による空調需要の増加 空調運転の増加による光熱費の増加(-) 空調運転の増加による光熱費の増加(-)
機会 製品・及びサービス 洪水などの災害のリスクが軽減化された設備・サービスの提供 環境認証取得済の物件にて賃料収入が増加(+) 環境認証取得済の物件にて賃料収入が増加(+)
高効率・低排出な設備・サービスの提供によるテナント・利用者への訴求
市場 テナント・入居者の嗜好の変化に合わせた賃貸物件の継続的な提供、新規顧客層の開拓
ESG投資の一層の進展によるレンダー・デッド・エクイティ投資家の投融資スタンスの変化への対応 ESG・気候変動対応を重視する投融資家への対応・訴求による調達手段の多様化・調達コストの低下(+) ESG・気候変動対応を重視する投融資家への対応・訴求による調達手段の多様化・調達コストの低下(+)
  • 時間軸については、中期:2030年を想定
収益への影響(試算)

【4℃シナリオ】

【4℃シナリオ】

【1.5~2℃シナリオ】

【1.5~2℃シナリオ】

本試算は、本投資法人の事業範囲の一部について分析したものであり、全体の影響を評価したものではありません。日本およびグローバルな政策動向等を踏まえ、試算対象項目における前提条件の考え方や対象項目の拡大等、更なる分析の深化に向け継続的に検討してまいります。

  • 本試算は、本投資法人の運用実績等を踏まえ、主要機関が提示するシナリオや文献等の各種パラメータを参考に試算した年間の影響額であり、その正確性を保証するものではありません。また想定する対応策についても、試算上の想定であり、実行を計画・決定したものではありません。

リスク管理

JEAMでは、重要な気候関連リスクを軽減し、機会を実現するため、次のような枠組みをもって気候関連リスク・機会を管理します。

サステナビリティ会議にて、年に1度、気候関連のリスクの識別及び評価を検討します。リスクの特定においては、可能な範囲で、リスクの時間軸、確信度及び影響度を各リスク、シナリオごとに評価するよう試みます。なお、気候変動対応に係る実務上の責任者は、定期的にサステナビリティ会議に対して、リスクの特定の進捗及び結果を報告します。
サステナビリティ会議では、特定された気候関連リスクについて、その確信度と影響度についての検討結果等をもとに、優先して対応すべき気候関連リスクについて審議し、リスク管理対応の優先順位付けを行います。気候関連の機会についても報告があった場合は、同様に審議し、事業戦略上の優先順位付けを行います。
気候関連課題に係る最高責任者は、サステナビリティ会議で審議された、事業・財務計画上重要な優先順位の高い気候関連のリスク及び機会について、その対策案の策定を指示します。
指定された担当部署あるいは担当者が策定する対策案は、その内容に応じて、サステナビリティ会議、あるいは社内の適切な委員会等の会議体において審議の上、実行されます。
事業・財務計画上重要な気候関連リスクについては、気候関連課題に係る最高責任者が既存の全社リスク管理プログラム(統合リスク管理)においても考慮するよう指示し、リスク識別・評価・管理プロセスの統合を図ります。

指標と目標

JEAMでは気候関連リスクの軽減または機会の実現を目的に、環境関連の目標設定、取組の実行およびモニタリングを実施し、環境パフォーマンスの改善を図っています。
気候変動対応に係る実務上の責任者または担当部の担当者は、各種取組の進捗、KPIについて、年に1度以上その状況を取りまとめ、サステナビリティ会議において報告しています。
現在、対象とする目標およびその実績は下記の通りです。今後も気候変動への適応・緩和に向けて目標・KPIが適切に設定・進捗していることを定期的に確認し、適宜指標の追加も検討します。

1.目標

2030年度のCO2排出量原単位を、2013年度比で▲46%削減すること、2050年度にネットゼロとすること、エネルギー消費原単位及び水消費量原単位を、各年度において前年度比▲1%、中長期的には2015年度から2019年度の原単位平均比で2020年度から2024年度の原単位平均を▲5%以上減少させることを目標としています。
なお、CO2排出量の2050年度ネットゼロ目標に向けた具体的な戦略策定は今後行う予定です。

2.環境パフォーマンス

2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
電力使用量 実績 (MWh) 73,866 65,751 63,239 60,845
原単位 (kWh/㎡) 215.3 200.1 197.1 196.8
燃料使用量 実績 (MWh) 22,921 20,038 23,312 18,632
原単位 (kWh/㎡) 66.8 61.0 72.6 60.2
地域冷暖房使用量 実績 (MWh) 25,907 23,503 23,983 24,131
原単位 (kWh/㎡) 75.5 71.5 74.7 78.0
エネルギー消費量合計 実績 (MWh) 122,695 109,293 110,536 103,609
原単位 (kWh/㎡) 357.7 332.7 344.6 335.2
CO2排出量 スコープ1実績 (t-CO2) 4,089 3,577 4,164 2,934
スコープ2実績 (t-CO2) 38,888 33,222 26,323 7,541
スコープ3実績 (t-CO2) 4,507
実績合計 (t-CO2) 42,978 36,799 30,487 14,983
原単位 (t-CO2/㎡) 0.13 0.11 0.09 0.04
水使用量 実績 (1,000m³) 395 289 267 281
原単位 (m³/㎡) 1.15 0.88 0.83 0.90
廃棄物量 実績 (t) 4,385 3,411 3,063 3,159